冷え症の原因は潜在性の鉄欠乏性貧血かも?鉄不足を改善する具体的な方法

冷え症で夏冬関係なく手足の先が冷たくてしかたがない…そう悩んでいる女性は多いと思います。
この原因はたいてい鉄欠乏によるもので、貧血の初期症状なことがほとんどです。
ただ少しややこしいのは、鉄欠乏性貧血のなかには潜在性のものがあって、健康診断や人間ドッグでは見つけられないことがあります。
なので本人にも自覚がないことが多いのですが、貧血と言われたことがないから鉄が足りているのかというと、そういうわけでもありません。
貧血ではなくても鉄が不足しているケースはよくあるので、冷え性の原因と具体的な改善策についてお話をしていきます。
目次
ふつうの食事でどれぐらいの鉄を摂取できているのでしょうか?
厚生労働省が平成26年におこなった国民栄養調査では、20~40代女性は平均して一日に6.5mgの鉄を食事から摂取しているようです。
栄養療法をおこなうときには、閉経前の女性の一日の鉄の必要量は2mgなので、これだけ見ると十分に摂取できていると思うかもしれません。
でも、鉄は吸収率がとても悪い栄養素で、摂取量の10%ぐらいしか吸収されないと言われています。
それを踏まえて毎日2mgの鉄を吸収しようと思うと、その10倍の20mgの鉄を毎日摂取して、やっと一日の必要量をまかなえる計算ですね。
しかも生理がある女性の場合では、月経のたびに約30mgの鉄が失われます。
つまり、「ふつう」の食事を一日に三回しているだけでは、ほぼすべての女性が鉄欠乏状態にあるといえます。
健康診断で鉄不足を指摘されない理由
鉄が不足しているのに、健康診断でそれを指摘されないのは、「栄養バランス」という観点では数値を見ないからです。
というのも、うちでは骨格の歪みを確認するレントゲン検査以外にも、血中の栄養状態を解析するために、特殊な血液検査を受けてもらうことがあります。
その検査の結果でも、程度の差はありますが、閉経前の女性はすべての人で鉄が不足しています。
貯蔵鉄が不足すると貧血症状が現れやすくなる
鉄には普段から血中で使っている分のほかに、いざというときのために肝臓に貯蔵している鉄があります。
生理が始まったり、疲労やストレスが溜まって鉄の使用量が増えたときには、この貯蔵分を切り崩して不足分を補うのですが、この貯蔵分自体が不足していることがほとんど。
ちょっと分かりにくいので、これをお金にたとえてみましょう。簡単に説明するとこのようになります。
- 肝臓に貯蔵している鉄→銀行に預けている貯金
- 血中で使用している鉄→財布に入っているお金
肝臓の貯蔵鉄の数値が低い人というのは、銀行に預金がほとんどなくて、財布に入っているお金だけでやりくりをしているような経済状態の人です。
普段はカツカツながらも何とかやりくりできるかもしれません。ですが、予想外の出費が必要になると余裕がなくなって、金欠状態になりますよね。
鉄も同じで、普段は血中の鉄だけでやりくりできたとしても、月経、ストレス、疲労などで鉄の使用量が増えてしまうと、血中の鉄だけでは足りなくなります。
それなのに貯蔵している鉄がないので、引き出してくるところがなく、すぐに鉄欠乏の症状が出てしまいます。
ちなみにこの貯蔵分の鉄の数値は、普通の健康診断や人間ドッグでは出てこないので、不足しているのに気が付きにくいのはこれが理由です。
どうして鉄が不足すると冷え症になるのか
人の体温は、細胞内のミトコンドリアにある、ATP(アデノシン三リン酸)という化合物が生み出しています。
ATPは主に細胞で基礎代謝を行ってエネルギー生産に関わっています。人の体温はその際に生まれる副産物なのですが、ミトコンドリアでATPを作るには鉄が必要なので、鉄が不足するとATP自体を作れなくなってしまいます。
そうするとATPが不足してエネルギー生産ができなくなるので、基礎代謝が低下して体温が維持できなくなり、低体温になります。
さらに鉄はタンパク質と結合してヘモグロビンを作り、酸素と熱を血液に乗せて体中に運ぶ役割もしています。
鉄が足りなくなると、熱と酸素の運搬もできなくなるので、心臓から遠い手足の末端から冷たくなってくるようになります。
これが、ザックリとした鉄欠乏で体温維持ができなくなる理由です。
鉄不足になるとコラーゲンの合成ができなくなるので美容にも悪影響
鉄はコラーゲンの合成にも使われています。鉄が不足するとコラーゲンが作れなくなるので、細胞の水分が保持できなくなり、お肌の潤いが失われてシワができやすくなります。
ほかにも関節のコラーゲン合成にも鉄は必要です。鉄が不足すると関節のコラーゲンを作れなくなり、関節が硬くなってスムーズに動かしにくくなります。
冷えたりすると足首や膝が痛くなる人は、鉄不足の影響でコラーゲンが作れなくなり、関節内の代謝が悪くなって痛んでいるケースも多いですね。
このように、鉄は健康面だけではなくて美容面でも重要な役割をする栄養素なので、不足しないようにしっかりと摂取したいところです。
鉄欠乏性貧血を改善する食事のとり方
鉄欠乏を改善する方法は単純です。必死に食事から鉄を補給しましょう。それしかありません。
ヘム鉄が豊富に含まれる食材
鉄には動物性のヘム鉄と、植物性の非ヘム鉄があって、植物性の非ヘム鉄はさらに吸収率が悪いです。ですので、動物性の食品から積極的に鉄を補給するようにしましょう。
ヘム鉄は動物性タンパク質に多く含まれており、このような食材に豊富です。(すべて100gあたりの含有量)
豚レバー | 13mg |
鶏レバー | 9mg |
牛肉 | 2.7mg |
しじみ | 4.3mg |
あさり | 3.8mg |
かつお | 1.9mg |
ふつうに食事をしていたら6.5mg前後は摂取できているでしょうから、残りの13.5mgをこのような食材から補給する必要があります。
ちなみに、ホウレン草には鉄が豊富に含まれているイメージがあるかもしれませんが、植物性の非ヘム鉄しか含まれていないので吸収率が悪く、毎日1kgほど食べないといけません。
もうそれだけでお腹がいっぱいになりそうです。現実的ではないので、しっかりと動物性の食品から補給するか、サプリメントなどから摂取するようにしましょう。
あとは鉄不足を改善するときにやりがちなのですが、じつは逆効果にしかならないこともあるので紹介しておきます。
もし当てはまるものがあったら、今すぐ止めましょう。
病院で処方される鉄剤は効果なし
病院で処方される鉄剤の問題点は、鉄が単体でしか含まれていないことです。
鉄を体内で活用するためには、ほかにもタンパク質やビタミンの助けが必要です。
鉄だけ補給していても意味はないので、タンパク質、ビタミン、その他のミネラルも一緒に補給するように注意しましょう。
また、鉄を単体で摂取していると、亜鉛や銅といった他のミネラルの吸収が阻害されます。
人間は鉄や亜鉛のバランスを取りながら利用しているので、鉄だけ摂取して他のミネラルが吸収できていないと、結果的に利用できる鉄も減ってしまいます。
ですので、すべての栄養素を出来るだけバランスよく、補給するように意識してください。
食事以外にもサプリメントで鉄を補給するのは有効な手段ですが、その際は基本的にはアメリカ製のサプリメントを選びましょう。
意外に思われるかもしれませんが、アメリカは栄養学の先進国なので、国産のサプリメントに比べると安全性が高く、品質もはるかに高品質です。
ちなみに、うちで栄養療法に使用しているサプリメントもアメリカ製です。
食事以外から補給するときは、鉄剤を飲むのではなくマルチビタミンやマルチミネラルなど、すべての栄養素がバランスよく含まれている製品を選んでみましょう。
お風呂で体を温めすぎるのも逆効果
冷え性の人にかぎって長風呂をするのですが、これは反対に冷えを悪化させる行為です。
シャワーだけで済ませるか、半身浴にするなど、あまり体を温め過ぎないようにしましょう。
たしかに湯船に首まで浸かっていると、ポカポカして一時的には体温が上がるかもしれません。
でも人間は爬虫類ではないので、自分で体温を調節することが出来ます。お風呂で上がりすぎた体温は、自律神経の働きで今度はすぐに元の体温まで下がってきます。
しかしそのときには自律神経反射が起こって、よけいに血管が収縮して血流が悪くなり、冷えが悪化してしまいます。
そもそも、体の中で熱を生み出せていないのが問題なので、外からいくら温めても意味はありませんよね。
まとめ
カウンセリングのときにも、「貧血ぎみじゃないですか?」と聞くと、「貧血って言われたことはないです」という人はすごく多いです。
しかし健康的な食事を一日三回取っていることと、必要な栄養素が十分な量摂取できているかは、まったくの別問題です。
もし手足が冷える、疲れやすい、気分の落ち込みが激しいなどが気になる場合は、鉄欠乏の症状かもしれません。
そんなときは、意識してもっとたくさんの鉄を補給するようにしてみましょう。