股関節が痛むのは先天的な疾患や、小児期に股関節疾患の既往歴があって、もともと関節の形状に問題がある場合に多くみられます。
歩行の際などに体重が掛かると股関節が痛むという方は、そのままにしていると関節の摩耗が進み、早々に人工関節置換術を受けなければいけなくなりますから、早めに対処するようにしましょう。
股関節の形状の問題がある場合は、根本的な改善ということは難しいのですが、骨格の歪みを矯正することによって、関節に掛かっている負担を軽減することが可能です。
関節にかかっている負担を軽減すれば、軟骨を保護して耐用年数を伸ばすことができますし、痛みの改善にもつながります。
股関節の疾患と脚長差
- 大腿骨頭すべり症
- ペルテス病
- 股関節形成不全
- 臼蓋形成不全
など、それぞれの細かい解説は省きますが、股関節にはさまざまな疾患が存在します。
症状が軽度であったり、処置がうまくいけばよいのですが、股関節の変形が残存してしまうと、将来的には変形性股関節症に進展する可能性が高くなります。
これは股関節の変形が残ると患側の足の長さが短くなってしまい、左右で脚長差がうまれてしまうからです。
そして、歩行の際などに股関節が痛む場合は、股関節の変形が残って足の長さが変わってしまい、患側の股関節に負担が掛かっていることが多いでしょう。
荷重関節としての股関節のはたらき
股関節は荷重関節とも呼ばれ、膝関節や足関節とともに自分の体重を支えながら動く、という役割を担っています。
そして、股関節で体重を支えながら動くことができるのも、骨格が正常な位置や角度を保っていることが条件となります。
通常、骨盤を正面から見た場合は、左右の高さがきれいに揃い、体の中心に腰の骨が乗っている状態が正常です。
これは自分の体重を体の中心で支えるための構造で、正常な状態であれば体の中心で荷重を受け止め、左右の足に均等に負担を分散することができます。
しかし、左右で足の長さに差異ができてしまうと、股関節の高さが変わってしまうので、左右均等に荷重がかからなくなってしまいます。
とくに股関節が悪い方の足は短くなっていて、立ったときに高さが低くなってしまいますから、荷重が偏って掛かってしまうので負担が大きくなります。
股関節に掛かる負担
股関節は体重を支えるために、そもそも負担の掛かりやすい場所でもあります。
たとえば、まっすぐ立っているだけでも体重の三分の一の荷重が左右それぞれの股関節に掛かり、歩くと股関節に掛かる負担はさらに増加して、体重の2~4倍の荷重が掛かるとされています。
これは歩くと地面に足を着地した際の衝撃が加わったり、片足を上げている間はもう片方の足で体重を支える必要があるからです。
厚生労働省が発表している令和元年の「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、一日の平均的な歩数は男性で6,793歩、女性は5,832歩です。
ということは、毎日それだけの回数、体重の二倍以上の荷重が股関節には掛かっていて、その半数は弱い方の股関節に掛かっていることになります。
そこで股関節に問題があって高さが違っていると、下がっている方の関節に荷重が偏りますから、ただでさえ弱い関節にさらに負担が掛かることになります。
そうすると、股関節が炎症を起こして痛むようになり、そのまま生活をしていると、いずれ軟骨がすり減って関節が変形してしまいます。
そのうちに椅子から立ち上がるような動作でも痛むようになって、日常生活動作がままならなくなって来ると、人工関節置換術を検討するというケースが多いでしょうか。
骨格の歪みを矯正して股関節の荷重を逃す
股関節疾患の既往歴があり、そもそも形状が左右で違うという場合、たとえ矯正をしても形を戻すことはできません。
骨格矯正はあくまでも骨の位置や角度を矯正するものであって、形状を変えることはできないからです。
しかし、歪んでいる骨格を矯正して、股関節の高さを揃えてあげれば、低くなっている股関節に偏って掛かっていた荷重を逃すことが可能です。
そうすれば、股関節の炎症が治まって痛みが改善しますし、負担が軽くなるので関節の変形を食い止めることができます。
まとめ
股関節の痛みに関しては、そもそも関節の形状自体に問題がある方が多いです。
そのため治療の目標も根本的な改善ではなく、股関節の負担を減らして痛みを改善し、なるべく耐用年数を伸ばすという方針になります。
これはご自身の寿命と関節の寿命の問題で、自分の寿命よりも股関節の寿命が長くなれば、最後まで人工関節の手術をおこなわなくて済むからです。
放置していると関節の摩耗が進むだけですから、できるだけ長く現在の日常生活レベルを維持するためにも、なるべく早く処置をすることが大切だと言えます。