坐骨神経は人体でいちばん長く太い神経で、腰から出たあといくつかの神経に枝分かれしながら、足の先まで伸びています。
その坐骨神経が圧迫されて、腰、お尻、太もも、ふくらはぎ、すね、足先などに痛みやしびれが出てくるのが坐骨神経痛です。
ただし、坐骨神経痛とは特定の病名のことではなく、原因の如何によらず坐骨神経が圧迫されて現れる症状のことで、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、分離すべり症などきっかけは様々です。
問題は何が原因で坐骨神経が圧迫されているかなのですが、ウイルスや細菌感染、腫瘍などを除くと、いずれにも骨格の歪みが影響していることが多く、その問題を取り除くことで坐骨神経の圧迫を解消することができます。
坐骨神経の走行と3パターンの原因
骨格が歪むと坐骨神経が圧迫されるのは、神経の走行と骨の位置関係の問題です。
坐骨神経は腰まで下りてきた脊髄から枝分かれしたあと、腰椎にある椎間孔という穴から背骨の外に出て、お尻にある梨状筋という筋肉のすき間を縫うように骨盤を通過し、最終的には足の先まで伸びていきます。
ですので、背骨から出て骨盤を通過する際に、途中のどこかで坐骨神経が圧迫されると、その場所に応じた症状が出てくるようになります。
骨格が歪んで坐骨神経が圧迫される場合は、大きく分けて3つのパターンがあるので、それぞれ解説していきます。
①座っていると痛い梨状筋症候群タイプ
坐骨神経は腰から出たあと、お尻にある梨状筋という筋肉のすき間を通り、足に向かっていきます。
この梨状筋に坐骨神経が圧迫されて、痛みやしびれを出すものを梨状筋症候群と呼びます。
梨状筋は骨盤を構成する仙骨という骨から、太ももの骨である大腿骨の大転子という場所に付着している筋肉なのですが、骨格が歪むことで仙骨と大転子の距離が遠くなります。
仙骨と大転子の距離が遠くなると、それぞれに付着している梨状筋が引っ張られて緊張が強くなり、坐骨神経を通すための空間が狭くなります。
そうすると、狭くなった場所を通らなければいけなくなった坐骨神経が、梨状筋に圧迫されてお尻や太ももの痛みやしびれが出てきます。
梨状筋症候群が原因の坐骨神経痛は、座ると神経の圧迫がより強くなるため、デスクワークや車の運転などで長時間座っていると、痛みやしびれが強くなってくるのも特徴です。
②しびれが強い椎間孔狭窄症タイプ
坐骨神経は脊髄から枝分かれしたあと、背骨にある椎間孔という穴から外に出てきます。
少し専門的な話になりますが、椎間孔は一つの骨に一つの穴が開いている訳ではなく、上にある骨の窪みと、下にある骨の窪みが噛み合わさるかたちで、二つの骨で一つの椎間孔が構成されています。
そこで、骨格が歪むと上下の骨の角度が変わって椎間孔が狭くなり、坐骨神経を通すのに十分な空間を確保できなくなります。
椎間孔が狭くなると、坐骨神経が背骨から出てくるときに圧迫されますから、坐骨神経痛の原因となります。
このタイプは筋肉のような軟らかいものではなく、硬い骨で坐骨神経を圧迫されるので、梨状筋症候群よりも神経の締め付けが強く、痛みやしびれも強いのが特徴です。
画像上でも椎間孔が狭くなっているのは確認できるので、レントゲンやMRIで検査をしたときに、「ヘルニアしている」「骨のすき間が狭くなっている」と言われたことがあれば、椎間孔も狭くなっていると考えて間違いないでしょう。
③歩くのもつらい脊柱管狭窄症タイプ
脊髄は脳から出ると背骨にある脊柱管というトンネルを通り、腰まで下りてきたあと坐骨神経に枝分かれします。
この脊柱管が狭くなる病気を脊柱管狭窄症と呼びます。
脊柱管が狭くなる原因も単純な加齢性変化というよりは、骨格の歪みによって骨や椎間板に負担が掛かり、変形した骨や椎間板が脊柱管を圧迫するからです。
脊柱管が狭くなると、なかを通っている脊髄を圧迫するようになり、その末梢神経である坐骨神経の支配領域まで痛みやしびれが出てきます。
脊柱管狭窄症による坐骨神経痛は、末梢神経の坐骨神経ではなく、中枢神経である脊髄が圧迫されるため、かなり強い症状が広い範囲に出る傾向にあります。
このタイプは間欠性跛行と呼ばれる症状が出ることも特徴です。
- 少し歩くと足の痛みやしびれのために歩けなくなる
- しばらく休むと痛みが治まって再び歩けるようになる
- もう一度歩き始めると痛みやしびれが再発してまた歩けなくなる
ということを繰り返す場合は、脊柱管で脊髄が圧迫されている可能性が高いでしょう。
保存療法ではなく原因治療を
坐骨神経痛と診断されると、まずは薬やマッサージ、ブロック注射などの保存療法で症状の改善を図り、それでも痛みやしびれが良くならない場合は手術が検討されます。
しかし、それでは表面的な症状に対処しているだけで、坐骨神経が圧迫されている根本的な原因は解消していません。
また、骨の変形や椎間板ヘルニアを伴っている場合は、保存療法で問題の先送りをしているうちに、骨が癒合して手遅れになることもあります。
いずれの症例も骨格の歪みを矯正することで、坐骨神経の圧迫を解消することが可能ですので、なるべく早く治療を開始するようにしましょう。