腰椎椎間板ヘルニアで腰の痛みが続いたり、足がしびれてくると、本当に治るのか不安になりますよね。
ヘルニアになるまでは意識することもなかったかもしれませんが、腰は日常生活動作の多くに関わっていますから、症状が強く出るようになると仕事どころではなくなってきます。
そんな腰椎椎間板ヘルニアですが、骨格の歪みが大きく影響していますので、この記事で詳しく解説していきます。
- 腰の痛みや足のしびれで仕事や日常生活に支障が出ている
- ブロック注射を打っているけど効果がない
- 手術はなるべくしたくない
という方は参考にしてみてください。
腰椎椎間板ヘルニアについて
腰の構造を簡単に説明すると、腰には椎骨というブロック状の骨が5つあり、それが靭帯などで結合されて腰椎が構成されています。
その腰椎の椎骨と椎骨の間に挟まっているのが、椎間板と呼ばれるクッション組織です。
人間は直立二足歩行で活動をしていますから、腰には上半身の重みを受け止めたり、歩行時の衝撃を吸収することが求められます。
そこで重要な働きをしているのが椎間板で、柔軟性に富んだ性質を活かして腰に掛かる負担や衝撃を吸収しています。
腰椎椎間板ヘルニアとは、その椎間板が本来の位置から飛び出して、近くにある坐骨神経や馬尾神経を圧迫するようになり、お尻や足の痛み・しびれが出てきます。
それ以外にも、腰のクッションをするはずの椎間板が飛び出して少なくなっているため、腰痛や腰の可動域制限(動きにくさ)も特徴的な症状でしょう。
椎間板ヘルニアはどれくらいで治る?
軽度の椎間板ヘルニアであれば、2~3ヶ月で自然退縮することが多いので、まずは薬物療法やブロック注射、牽引などの保存療法が選択されます。
椎間板ヘルニアがなぜ自然退縮するのかというと、白血球のマクロファージの貪食作用によるものです。
本来の位置から飛び出した椎間板は、体からは異物として認識されるため、マクロファージが集まってきて分解していきます。
椎間板の突出していた部分が分解されて小さくなると、神経の圧迫も緩和されて足の痛みやしびれが改善されていきます。
ただし、保存療法で症状の改善がみられず、下肢の麻痺、排尿・排便障害などが出てくるような場合には、手術が検討されるようになります。
必要なのは原因に対しての治療
しかし、ここで気をつけないといけないのは、保存療法や手術療法はあくまでも飛び出した椎間板に対して処置をしているだけだということでしょう。
椎間板が飛び出すそもそもの問題を解消せずに、飛び出した椎間板にばかり対処していても、根本的な原因が取り除かれていないわけですから、時間が経つといずれ再発してしまいます。
つまり、椎間板ヘルニアで本当に対処するべき問題は、神経が圧迫されて症状が出ていることではなくて、椎間板が本来の位置から飛び出してしまう理由の方だということです。
そして、この腰の椎間板が飛び出してしまう理由が、骨格の歪みであることが多いのです。
腰椎椎間板ヘルニアの原因
骨格が歪むと椎間板ヘルニアを発症するのは、構造的な問題が生じて椎間板に掛かる負担が増加するからです。
私たちは直立二足歩行で活動をしていますから、背骨を地面に対して垂直に立てた状態で生活をしています。
さらに、人間は脳や内臓などの重たいものが上半身に集まっている影響で、体重の6~7割は上半身に偏っているとされています。
この上半身の重みを受け止めて支えているのが腰です。
そこで骨格が歪んでしまうと、構造的な問題が生じて上半身の重みを支え切れなくなり、椎間板に掛かる負担が増加することになります。
骨格が歪むと椎間板に掛かる圧力が増加する
通常、腰を正面から見た場合は、骨盤の高さが左右同じで、その上に腰椎がまっすぐに揃って乗っているのが正常な状態です。
この状態であれば、腰の真ん中にまっすぐ荷重が掛かり、左右の骨盤で均等に上半身の重みを受け止めることができます。
しかし、骨格が歪んで構造的な問題が生じると、骨盤が歪んで左右で高さが変わり、その上に乗っている腰椎も影響されて歪んでしまいます。
腰椎が歪むと腰の真ん中にまっすぐ荷重が掛からなくなるので、その間に収まっている椎間板にもまっすぐ圧力が掛からなくなり、ひとつの椎間板のなかで圧力の高い場所と低い場所が生まれます。
ひとつの椎間板の中で圧力差が生まれると、椎間板は圧力の高い方から低い方へと、押し出されるように移動していき、限界を迎えると飛び出して神経を圧迫するようになります。
身近なもので例えると、具がたくさん挟まったハンバーガーの片側を強く握ったら、反対側から中身がこぼれてしまうと思いますが、椎間板にも同じ原理がはたらきます。
これが骨格が歪むと椎間板ヘルニアを起こす理由の簡単な説明ですね。
椎間板ヘルニアでやってはいけないこと
椎間板ヘルニアは筋疲労からくる腰痛ではなく、骨格の歪みによって押し出された椎間板が神経を圧迫している状態です。
知らずにやってしまうと悪化することもありますので、気をつけた方がよいことも併せてご紹介しておきます。
重いものを持つ、長時間座っている
これは椎間板ヘルニアだからというわけではありませんが、重いものを持つと自分の体重に加えて荷物分の荷重が腰に掛かりますから、その分だけ椎間板に掛かる圧力が増加します。
とくに前傾姿勢で床に置いてある荷物を持ち上げると、腰には通常時の二倍以上の負担が掛かるので、不用意に関節に強い圧力を掛けていると、どんどん椎間板が押し出されて悪化してしまいます。
仕事や用事でどうしても重たいものを持つ必要がある場合は、コルセットを装着するなど、腰に掛かる負担を軽減させるよう工夫しましょう。
また、長時間同じ姿勢で座っていることも腰には負担を掛けますので、仕事がデスクワークの場合は適度に休憩を取るなど、座りっぱなしにならないように気をつけてください。
意外に思われるかもしれませんが、腰に掛かる負担だけを考えた場合は、立っているよりも座っている方が大きくなります。
上のグラフは姿勢ごとの腰の椎間板に掛かる負担を表したものですが、まっすぐ立った状態を基準にすると、座った姿勢で1.4倍、前傾姿勢で荷物を持つと2.2倍の負担が掛かることが分かっています。
これは前傾姿勢を取ったり、座ることによって腰のカーブが少なくなるため、椎間板に掛かる圧力が高まるからです。
腹筋運動やストレッチ
運動が必要だからといって、むやみに腹筋運動やストレッチをしてしまうと、椎間板ヘルニアを悪化させてしまうことがあります。
たしかに、腰を安定させるために腹筋を強化するのはよいのですが、上体起こし(シットアップ)のように繰り返し腰を曲げ伸ばしする運動は注意が必要です。
腰を曲げると関節内の圧力が高まりますから、椎間板を押し出す力がより強くはたらくようになって、ヘルニアを悪化させてしまう可能性があります。
ストレッチも同様に、腰を強く曲げてしまうと関節内の圧力が高まり、椎間板を押し出す力がはたらきます。
運動やストレッチもやればよいというものではなく、方法を間違えると逆効果になりますので、主治医の先生やよく勉強されているトレーナーに相談するなど、慎重におこなうようにしましょう。
なお、椎間板ヘルニアは筋力や柔軟性の問題ではなく、椎間板が飛び出して神経を圧迫していることが問題です。
運動やストレッチをおこなったからっといって、椎間板ヘルニアが根本的に改善するわけではありませんから、将来的なことまで長期的な視点で考えるなら、なるべく早く原因療法に取り組むようにしましょう。
骨格の歪みを矯正して椎間板ヘルニアを改善させる
椎間板ヘルニアの多くは、骨格が歪むことによって圧力が高まり、本来の位置から押し出されることが原因です。
したがって、骨格の歪みを矯正して、椎間板に掛かる圧力を正常化させれば、飛び出した椎間板を元の位置に戻すことが可能です。
骨格の歪みがなくなって椎間板に掛かる圧力が下がれば、陰圧の作用がはたらいて、今度は反対に圧力の高い方から低い方へと引っ張られて戻っていきます。
椎間板が元の位置に戻れば、神経の圧迫も解消されますから、腰の痛みや足のしびれも改善していくでしょう。
椎間板ヘルニアが元に戻るかは状態による
ただし、骨格の歪みを矯正すれば、すべての椎間板ヘルニアが改善するわけではありません。
発症してから時間が経っていると、椎間板から水分が抜けてしまって、柔軟性が低下していることがあります。
椎間板の柔軟性がなくなっていると、矯正をして関節の圧力を下げても、元の位置に戻るだけの力が残されておらず、神経を圧迫したままになって症状も改善しなくなってしまいます。
レントゲンを撮ったときに、骨のすき間が狭くなっている場合は、椎間板から水分が抜けて薄くなっている状態ですから、なるべく早く原因療法をはじめるようにしましょう。
まとめ
世の中の椎間板ヘルニアの治療法を見ていると、根本的な原因に対する治療ではなく、表面的な症状に対しての治療が主流になってしまっています。
たしかに、一時的にでよいならそれでも症状は改善するかもしれませんが、いずれ再発してしまう可能性が高いでしょう。
椎間板ヘルニアが慢性化したり、手術をしたのに再発してしまうのも、この記事で紹介したような骨格の歪みが解消していないからです。
ヘルニアによる腰痛や足の痛みやしびれが改善せずに困っている場合は、いちど骨格の歪みを確認するようにしてください。