いつも腰が痛いと気分も生産性も下がりますよね。
それにもかかわらず、腰痛は原因を特定しにくい疾患でもあり、病院で検査を受けて大きな異常が見つからなければ、痛み止めの薬や湿布、マッサージなどで騙し騙しやり過ごすしかありません。
しかし、腫瘍や感染症といった病気を除いて考えると、腰の痛みは骨格の歪みが原因で引き起こされていることがほとんどで、この問題を解消できれば慢性的な腰痛の改善が可能です。
そこで、この記事では骨格が歪んで腰痛が起こるメカニズムと、その改善方法について解説していきます。
腰痛が治らない理由
腰痛がなかなか改善しなくて慢性化しやすいのは、原因を特定することが難しいからです。
2012年に日本整形外科学会によって発行された「腰痛診療ガイドライン2012」には、85%程度の腰痛は診断を正確におこなうことが困難であると記載されています。
つまり、腰痛の8割以上は原因を特定しきれないということになりますね。
その後、2019年に改訂された「腰痛診療ガイドライン2019」では調査が進んだ結果、腰痛の内訳が以前よりも詳しく分かるようになってきました。
その内訳は、
- 椎間関節性22%
- 筋・筋膜性18%
- 椎間板性13%
- 狭窄症11%
- 椎間板ヘルニア7%
- 仙腸関節性6%
- 原因不明22%
となっており、約75%の腰痛は診断可能になったそうです。
しかし、ここでよくよく考えないといけないのは、これでは腰痛の部位が特定されただけで、「なぜ腰痛が起こるのか?」という根本的な原因は、いまだに解明されていないということでしょう。
What ではなく Why? に注目する
椎間関節性や筋・筋膜性というのは、どこの部位から痛みが出ているのかという表面的な情報であって、なぜ腰が痛くなるのかという根本的な疑問には答えていません。
そもそも椎間関節や筋膜に炎症が起こるのはなぜ? 椎間板が薄くなり、骨のすき間が狭くなるのはなぜ?
腰痛をどれだけ細かく分類したとしても、根本的な原因を見つけて取り除かない限り、結局はその場しのぎの対症療法を続けるしかありません。
しかし、このような腰痛を解剖学的に考えると、骨格の歪みが原因であることが多いのです。
腰に負担が掛かりやすい構造的な欠陥
骨格が歪むと腰が痛くなりやすいのは、人間の体の構造に問題があります。
人間は地球上の生物で唯一、直立二足歩行で活動をしています。二本の足で立って生活をするためには、背骨を地面に対して垂直に維持しつつ、それをバランスを保ちながら支え続けなければなりません。
その役割を担っているのが、腰から下の下半身の骨格ですね。
しかも、人間は頭や内臓などの重たいものが上半身に集まっているため、上半身と下半身で体重を分けたときには、6~7割が上半身に偏っているとされています。
その上半身の重みを横になって寝ている時間以外は、立っていても、座っていても、歩いていても支えないといけない訳ですから、腰にはもともと負担が掛かりやすいという構造上の欠陥があります。
しかし、骨格の配列が正常であればよほどの肥満でもない限り、自分の体重くらいは支えられるように設計されています。
腰痛を予防する正しい骨格の形状
人間の背骨を横から見ると、なだらかなS字カーブを描いているのが正常な状態で、腰の部分はお腹の方に前弯しています。
一方、正面から見た際は上から下まで、すべての骨が一列に揃っているのが正常な状態です。
この構造にも意味があり、腰のカーブは上半身の重みを分散したり、歩行時の地面からの衝撃を吸収するスプリングのような役割をしています。
つぎに正面から見た際にポイントになるのは骨盤です。骨盤は上半身の重みを受け止める土台のような役割をしており、その上に背骨がまっすぐ揃って乗っていることで、体の中心でバランスよく上半身の重みを受け止められるようになっています。
ところが、骨格が歪んでこの構造が破綻してしまうと、自分の体をうまく支えられなくなって、腰に掛かる負担が大幅に増えてしまい、負担が掛かっている関節や筋肉に炎症が起きて腰痛の症状が出てきます。
とくに腰痛持ちの方に特徴的な歪み方がありますので、これから詳しく解説をしていきます。
腰の骨に沿って痛みが出る理由
まず挙げられるのは、本来は前弯している腰の弯曲がなくなり、まっすぐになってしまっていることでしょう。
先ほど書いたように、腰のカーブは上半身の重みを分散し、歩行などの際は衝撃を吸収する働きがあります。
そこで腰の弯曲がなくなってしまうと、バネが伸びきったような状態になってクッションが効かなくなるので、上半身の重みを分散できなくなります。
また、歩行時の衝撃も吸収されずに、まともに腰に伝わるようになりますので、椎間関節に負担が掛かって炎症を起こすようになります。
このような方は、椎間関節の炎症が強いため、腰の骨に沿って痛みが出やすいのが特徴です。
さらに、クッションが効かなくなった状態で慢性的に腰に負担を掛けていると、負担に耐え切れずに関節が変形してきたり、衝撃によって椎間板がすり減ってしまいます。
レントゲンを撮ったときに「骨のすき間が狭くなっている」「骨が変形している」と言われるような方は、骨格の歪みを分析すると腰の弯曲がなくなっていることが多いでしょうか。
いつも腰の同じ場所がだるい理由
もうひとつ腰痛持ちの人に多いのは、骨盤が歪んでいるケースでしょう。
骨盤は上半身の重量を受け止める土台のような役割をしているのですが、正面から見たときは左右の高さが揃っており、その上に乗っている腰椎が体の正中線上に一列に並んでいるのが正しい形です。
この状態であれば上半身の重みを体の中心で受け止め、左右の足へ均等に荷重を受け流すことができます。
しかし、骨盤が歪んで左右の高さに差異が生まれると、その上に乗っている腰椎も体の中心から外れ、下がっている骨盤の方へ倒れていってしまいます。
こうなると、骨盤の中心にまっすぐ上半身の重みが掛からなくなり、下がっている方の骨盤に荷重が偏って掛かるようになります。
上半身の重みが体の中心に掛からなくなったとしても、直立二足歩行で活動をしている以上は、なんとかして背骨を支えておかないと日常生活を送ることができません。
そこでどうするかというと、背骨を支えている筋肉がいつも以上に働いて、傾いている腰椎を支えるようになります。
これでなんとか支えはするものの、横になって寝ている時間以外は、つねに背骨を支えるために筋肉が過緊張している状態になるので、柔軟性が低下して痛みやだるさが出てきます。
骨盤が歪んでいるタイプの腰痛は、左右どちらかの筋肉につねに偏った負担が掛かるため、いつも腰の同じ場所が重だるいという方が多いですね。
また、このタイプは椎間板に掛かる圧力にも不均衡が生じるので、腰椎椎間板ヘルニアを発症しやすくなりますから、早めに対処しておくようにしましょう。
腰痛の根本的な改善方法
このような骨格の歪みが原因で起こる腰痛に関しては、その歪みを矯正して構造的な問題を解消することで、根本的な改善が可能です。
腰のカーブが回復すれば、腰に掛かる上半身の重みを分散できるようになりますし、歩行などの際に腰に掛かる衝撃も吸収できるようになります。
骨盤の歪みを矯正すれば、上半身の重量を体の中心で支えられるようになりますから、腰の筋肉が過緊張して無理に支える必要もなくなります。
そうすれば、構造的な問題によって起こっていた腰痛は出なくなるでしょう。
腰痛による人生の損失
腰痛がなかなか改善しなくて、慢性化している方も多いのではないでしょうか。
それはこの記事で解説をしたように、腰痛の根本的な原因に対してのアプローチではなく、表面的な症状に対してのアプローチを繰り返してしまっているからです。
一説には、腰痛などの慢性の痛みによる集中力低下や、ストレスに影響される生産性低下から発生する時間ベースの経済損失は、一週間で4.6時間にもなると言われています。
限りある人生の時間を充実したものにするためにも、まずは体のコンディションが整っていなければ、本来のパフォーマンスを発揮することはできません。
慢性的な腰痛で毎日のパフォーマンスが低下しているのなら、根本的な原因に目を向けて改善するようにしましょう。