腕や足にしびれが出ているのなら、何かが神経に当たって圧迫している可能性が高いでしょう。
圧迫が筋肉の凝りによる一時的なものなら良いですが、中には骨が神経に当たってしびれが出ていることもあります。
骨が神経に当たっている場合は、ストレッチやマッサージでの改善は難しいですから、もっと根本的な問題解決をおこなう必要があります。
そして、骨が神経に当たってしまうのは、骨格が歪んで本来の位置から外れてしまっているのが原因であることが多いので、この記事で詳しく解説していきます。
骨は神経を保護している
骨格が歪むと神経を圧迫してしまうのは、骨と神経の位置関係によるものです。
神経は脳からの指令を全身に伝えるとともに、全身から集まってきた情報を脳に送り返し、その情報によって体全体をコントロールしていますから、生命維持に欠かせないほど重要なものです。
それと同時に神経は柔らかく傷つきやすいという特徴もあります。
ですので、中枢神経である脳と脊髄はとくに厳重に守られていて、脳を頭蓋骨の中に、脊髄は背骨の中に収めるようにして、外部からの衝撃で簡単に損傷しないようになっています。
骨格が歪むと中の神経が圧迫される
背骨には脊柱管という空間が設けられていて、脳から出ている脊髄が腰まで向かうまでの間、傷つかないように守っています。
また、背骨には椎間孔という横穴も開いていて、脊髄から枝分かれする神経根はその穴を通り、腕や足、内臓など目的の場所に分布していきます。
この脊柱管や椎間孔は背骨が正常な形を維持している前提で設計されているので、背骨が歪んでしまうと十分な空間を確保できなくなります。
そうなると、脊柱管が狭くなって脊髄が圧迫されたり、椎間孔を通るときに骨が神経根に当たるようになります。
背骨は曲がっていませんか?
背骨を正面から見た場合、上から下まで一直線に揃っているのが正しい形です。
これにもたくさんの理由があるのですが、骨と神経という視点で考えたときには、神経根が出ている椎間孔という空間を確保するためです。
椎間孔は一つの骨に一つの穴が開いているのではなく、上の骨の切れ目と下の骨の切れ目が合わさって、一つの空間が形成されています。
そこで骨格が歪んでしまうと、上下の骨の角度が変わってしまい、椎間孔の直径が小さくなってしまいます。
椎間孔の直径が狭くなると、脊髄から末梢神経が出てくるときに神経根が骨に当たるので、痛みやしびれを出すようになります。
頚椎からは腕の神経が出ている
首は正面から見た場合は上から下まで一列に揃っているのが正常な形です。
この状態であれば、すべての椎間孔に十分な空間が確保されますので、脊髄から出ている神経も圧迫されることなく、背骨の中から出てくることができます。
しかし、このレントゲンのように頚椎が歪んでしまうと、歪んでいる場所で骨の角度が変わってしまい、椎間孔が狭くなって神経を通すのに十分な空間を維持できなくなります。
頚椎からは肩から先を支配する腕神経叢という神経の束が出ていますから、首の椎間孔が狭窄して神経が圧迫されると、その神経の支配領域である腕や手に痛みやしびれが出てきます。
腰椎からは坐骨神経が出ている
腰も基本的な構造は首と同じで、正面から見た場合は体の正中線上に一列に揃っている必要があります。
腰からは人体の中でいちばん長くて太い坐骨神経が出ていますから、そのための空間を確保するための構造ですね。
しかし、骨格が歪んでしまうと、歪んでいる部分で骨の角度が変わってしまい、背骨から坐骨神経が出てくるときに圧迫されるようになります。
その結果、圧迫されている坐骨神経の支配領域に、痛みやしびれが出てくるようになります。
背骨の生理的弯曲はありますか?
背骨を正面から見ると一直線に揃っていないといけないのですが、横から見た場合は緩やかにS字カーブをしているのが正常な形です。
これを脊柱(背骨)の生理的弯曲と呼びます。
頚椎が顔の方に前弯、胸椎は背中の方に後弯、腰がお腹の方に前弯しているのが本来の形で、歩行時に背骨や脳に加わる衝撃を吸収したり、背骨の掛かる頭や上半身の荷重を分散する働きがあります。
なお前述したように、背骨には脊髄を通すための脊柱管というトンネル状の空間があります。
脊柱管は背骨が生理的弯曲を維持している前提で設計されていますから、背骨が歪んでしまうと十分な空間を維持できなくなり、中に収まっている脊髄を圧迫してしまうようになります。
首には頚髄が通っている
頚椎を横から見た場合は、顔の方にカーブしているのが正常な状態です。
この形を維持していれば、脊柱管にも十分な空間が確保できるため、中を通る脊髄が圧迫されることはありません。
しかし、頚椎が歪んで前弯が崩れると脊柱管が狭められてしまって、中の脊髄が圧迫されるようになります。
たとえば、ホースを折り曲げると空間が狭くなって、水の通りが悪くなると思いますが、同じようなことが起こります。
とくに脊髄でも首の部分を通っているものを頚髄と呼び、腕や手の運動や感覚を支配する非常に重要な場所です。
首で脊髄が圧迫されると腕の痛みやしびれのほかに、握力の低下や細かい作業がしにくくなる、指先の感覚が鈍くなるなどの脊髄症状を呈するようになります。
腰には馬尾神経が通っている
腰も横から見た場合は、お腹の方にカーブしている必要があります。
腰に通っているのは馬尾神経と呼ばれるもので、細かい神経の束が馬の尻尾に似ていることから名前がつけられました。
腰もカーブが正常であればよいのですが、骨格が歪んでカーブがなくなると、脊柱管が狭くなって中に収まっている馬尾が圧迫されてしまいます。
そうすると、腰の激しい痛み、お尻のしびれ、頻尿や尿失禁などの馬尾症候群が出てくるようになります。
骨は変形していませんか?
歪んだ骨格をそのままにしていると、骨に負担が掛かって変形してしまうため、骨棘と呼ばれるトゲが形成されることがあります。
骨棘が出来る位置によっては、脊髄や神経根に直接当たってしまうことがあり、これが神経圧迫の原因となります。
変形している骨が当たっている場合、トゲが脊髄や神経に当たることになるので、強い神経症状が出てくることも特徴です。
首の変形で起こる症状
変形した首の骨が神経に当たるものを変形性頚椎症と呼びます。
骨棘が当たる位置によって、頚椎症性神経根症や頚椎症性脊髄症と病名が変わりますが、基本的なメカニズムは同じです。
首の骨の後方に骨棘が出来ると、脊柱管を通る脊髄に当たるようになり、首の痛みや腕の痛み、しびれの原因となります。
腰の変形で起こる症状
腰で骨が変形したものは、腰部脊柱管狭窄症や変形性腰椎症と診断されることが多いでしょうか。
この場合も、変形した骨のトゲが脊柱管の中に入り込み、馬尾神経を突くようになるため、腰やお尻の痛み、足のしびれなどの神経症状を呈します。
骨の変形が一定以上進行すると治らない
また、骨の歪みは進行性ですので、矯正して負担を取り除かない限り、時間の経過とともに変形も悪化していきます。
そして、最終的には大きくなった骨棘が隣の骨まで到達し、骨同士が癒合してしまうことがあります。
骨がくっついてしまうと矯正をしても動きませんから、改善の見込みはありません。
骨が癒合してしまうと、「原因は分かっても治す方法がない」という状況になりますので、腕や足のしびれが出ているのなら、なるべく早く骨格の状態を確認するようにしましょう。
まとめ
腕や足がしびれる原因はいくつかの可能性が考えられます。しかし脳疾患、腫瘍、感染症などを除くと、骨が神経に当たってしまっていることがほとんどでしょう。
そして、骨が神経に当たる原因を考えていくと、骨格の歪みによって脊柱管や椎間孔が狭くなってしまい、中を通る脊髄や神経根を圧迫していることが多いです。
骨格が歪んで骨が神経に当たっている場合は、ようすを見ていても改善する見込みはありませんので、いちど骨格の歪みを確認するようにしてください。