子どもの姿勢が悪いと気になりますよね。
相手に与える第一印象の大部分は、姿勢や身だしなみなどの視覚情報で決まると言われていますので、そのまま大人になると苦労をするのではないかと心配をされているかもしれません。
ただ、これは子どもに限らないのですが、姿勢が悪いのは体の中で骨格が歪んでしまっているからであることが多く、本人の努力や意志の力で改善するには限界があります。
姿勢が悪くなる理由
姿勢が悪くなる理由は大まかに分けると二つあります。
ひとつはこの記事の主題である骨格の歪みと、もう一つは体力不足です。
この記事では骨格の観点から解説していきますが、体力不足についても簡単に触れておきます。
姿勢を保持する抗重力筋の筋力不足
体を支えているのは骨格ですが、それを支えているのは筋肉です。
地球で生活をしている限りは重力の影響を受けるのですが、重力に抵抗して骨格を支えているのが抗重力筋と呼ばれる体幹の筋肉です。
体力が不足して抗重力筋が弱くなってしまうと、重力に負けてしまって正しい位置で骨格を保持できなくなるので、外見上も姿勢が悪くなってしまいます。
これは運動不足の大人だけではなく、子どもにも当てはまることで、文部科学省の調査では、昭和60年頃から子どもの体力は低下傾向が続いているそうです。
少し古いデータですが以下に引用します。
子どもの体力の現状と将来への影響
【ポイント】子どもの体力向上のための総合的な方策について(答申)
- 子どもの体力・運動能力は,昭和60年ごろから現在まで低下傾向が続いている。また,運動する子どもとしない子どもの二極化の傾向が指摘されている。
- 体を思うとおりに動かす能力の低下が指摘されている。
- 肥満傾向の子どもの割合が増加しており,高血圧や高脂血症,将来の生活習慣病につながるおそれがある。
- 体力の低下は,子どもが豊かな人間性や自ら学び自ら考える力といった「生きる力」を身に付ける上で悪影響を及ぼし,創造性,人間性豊かな人材の育成を妨げるなど,社会全体にとっても無視できない問題である。
なお、近年の子どもの体力低下に関する調査は、全体では横ばいではあるものの、習慣的に運動をしている子どもと、そうではない子どもの間で体力差が広がっているそうです。
体育の授業以外で運動をしていないようなら、体を動かす習慣をつけて体力を向上するようにしてみましょう。
骨格が歪むと姿勢が悪くなる
姿勢が悪くなる理由でもう一つ挙げられるのは、骨格の歪みです。
人間の骨格は人形で例えると芯材みたいなものですから、体のなかで骨格が歪んでしまうと外見にも反映されてしまいます。
たとえば、脊柱(背骨)を横から見ると、S字にカーブしているのが正常な形で、頚椎が前弯、胸椎が後弯、腰椎が前弯しています。
これを生理的弯曲と呼びます。
生理的弯曲の役割はたくさんあるのですが、姿勢という観点から見た場合は、頭を体の中心で保持してバランスを取ることです。
一般的によい姿勢というのは、壁に背中をつけた際に腰に拳一つ分の空間があり、後頭部が壁に接する状態だとされています。
自然に正しい姿勢になるのは背骨の生理的弯曲が維持されているからで、骨格が歪むとこの状態を保持できなくなります。
首が歪むと猫背になる
とくに分かりやすいのは、頚椎の歪みでしょう。
首を横から見ると、前方に弯曲しているのが正常な状態で、姿勢という観点から考えた際は、このカーブが頭の重心を体の中心で保持してくれています。
そこで頚椎のカーブがなくなると、頭の重心が前方に移動してしまい、顔を前に突き出した猫背のような格好になります。
もしかしたら、姿勢が悪いと体が歪んでしまうと思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、実際の因果関係は逆で「体が歪んでいるから姿勢が悪い」というのが正しい順序です。
子どもでも骨格は歪んでいる?
子どもなのに骨格が歪んでいるのか? と疑問に思われるかもしれません。
しかし、骨格が歪む原因でいちばん多いのは、外傷といって体の外部からの衝撃ですので、症状の有無は別として、子どもでも骨格が歪んでいることは普通です。
参考までに、どのようなことが原因で子どもの骨格が歪むのか、よくある例をご紹介していきます。
出産時の外傷
人生で一番初めに遭遇するのは出産時です。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中から出てくるときは頭から出てきますよね。
この際に、出産がスムーズに進まずに途中で頭などが引っかかってしまうと、赤ちゃんの骨は非常に軟らかいので、それが原因で歪んでしまうことがあります。
実際、頭痛を訴えて来られる小学生くらいの患者様の問診をしていると、難産で吸引分娩や鉗子分娩だったということがよくあります。
吸引カップや鉗子で赤ちゃんの頭を引っ張ると、首には強いテンションが掛かってしまうからです。
母体や赤ちゃんの安全が最優先ですので、吸引分娩や鉗子分娩を否定するわけではありませんが、骨格という観点からみた場合は、赤ちゃんの首にダメージが残ってしまうことがあります。
ですので、お子様が難産だった場合は、大人になるまでにいちど骨格の歪みを確認しておくとよいでしょう。
幼少時の転倒
幼少時の転倒も骨格が歪む原因になります。
- よちよち歩きを始めた頃に転倒して床におでこをぶつけた
- ソファやベッドなど高さのあるところから落ちた
などが典型的な例ですね。
骨格の歪みは怪我ではありませんので、時間が経ったからといって治癒することはなく、矯正をしなければそのまま成長していきます。
したがって、家族や本人も覚えていないような小さい頃の転倒が原因で、骨格が歪んでいることがあります。
実際、一歳の頃に階段から落ちて出来たと考えられる骨格の歪みが原因で、40歳を超えてから首の痛みや腕のしびれなどの症状が出てくる、ということも珍しくはありません。
小さい頃に一度も転倒したことがない、という人はいないでしょうから、誰でも骨格が歪んでいる可能性はあります。
とくに気をつけたいのは以下の二点です。
- 高いところから落ちたことがある
- 交通事故に遭ったことがある
このどちらかに当てはまる場合は、骨格が歪んでいる可能性が高いと言えるでしょう。
体育の授業やスポーツ
体育の授業やスポーツなども、骨格を歪めてしまうことがあります。
- 跳び箱やマット運動に失敗して転倒した
- スポーツで接触や転倒をした
というのも立派な外傷です。
とくにサッカーや武道などのコンタクトスポーツ、野球やテニスなど体を強く捻じるスポーツでは骨格にも大きな外力が加わります。
骨格という観点から考えると、無批判にスポーツが体に良いとも言えませんので、よく運動をしているのに姿勢が悪い、という場合は骨格の歪みを確認してみるとよいでしょう。
スポーツをしているせいで骨格が歪んでいるかもしれません。
意志の力で姿勢を改善することは難しい
この記事で紹介してきたように、姿勢が悪いのは本人の意識の問題というよりも、体の中で骨格が歪んでしまっているからかもしれません。
その場合は、だらしなく見えるような姿勢が自然な形ですから、無理に良い姿勢を意識すると筋肉や関節に負担が掛かってすぐに疲れてしまいます。
しかし、骨格の歪みを矯正して頭の重心を本来の位置に戻せば、きれいな姿勢が自然な状態になりますので、意識をしなくても姿勢が改善されていきます。
まとめ
姿勢に関しては本人の意識の問題とは限らず、そもそも骨格が歪んでしまっていることが多々あります。
骨格が歪んで姿勢が悪くなっているのなら、躾や本人の努力で改善するものではありません。
そのまま大人になると外見上の問題以外にも、将来、様々な症状に悩まされることもありますので、お子様の姿勢が気になるなら、いちど骨格の歪みを確認するようにしてください。